いわゆる「肩こり」に悩まされている方は非常に多いです。

国民生活基礎調査での有訴者率の上位5疾患を見ても、

女性では第一位、男性で第二位となっています(平成28年度)。

「肩こり」という言葉が広まったのは夏目漱石が小説の中で

「肩が凝る」「肩が張る」

という表現をしたからと言われていますが、

日本人には非常に馴染みのある言葉の一つ。

一方、欧米では肩こりが無い、などと言われる事もありますが、

正確には「肩こり」という言葉と全く同意義の言葉が無いという事のようです。

 

僧帽筋と肩こり

そして、その肩こりの原因となる筋肉の一つが「僧帽筋」です。

僧帽筋は背中の表面にある大きな筋肉で、

僧侶のかぶる帽子に形が似ているからこの名前が付きました。

ちなみに、日本のお坊さんではなく中世ヨーロッパの僧侶を想像していただくと良いかと思います。

 

後頭部から背中に沿って背骨の出っ張りである「棘突起」に始まり、

肩甲骨から鎖骨にかけて付着する筋肉です。

大きな筋肉ですので、上中下に分けられ、

上部は肩甲骨を上に持ち上げ、

中部は肩甲骨を内側に引き、

下部は肩甲骨を回転させて腕を上げる働きが有ります。

首から肩、背中にかけて覆っている大きな筋肉であり、

まさに肩こりで悩まされる箇所です。

 

 

 

脳とストレスとの関係

僧帽筋を支配しているのは12個ある脳神経のうちの一つ「副神経」。

脳神経とは、脳から直接出ている神経の事で、

一般的に手足や体幹の筋肉は脳とつながる脊髄から始まる「脊髄神経」に支配されています。

この僧帽筋と、首の前側にある「胸鎖乳突筋」の二つは

一部首から出ている脊髄神経の支配をうけますが、

どちらも主に「副神経」に支配されています。

 

つまり脳と直接つながっている筋肉と言う事も出来、

脳とのつながりが深くストレスを感じると収縮しやすいので

肩こりの原因になりやすいのです。

 

なぜこの二つの筋肉は脳と直接つながるのでしょうか?

 

発生学的には、この二つの筋肉は魚のエラを動かす

「鰓弓(さいきゅう)」

という筋肉と同じものと言われています。

 

エラと言えば呼吸に必要な物で、内臓とのつながりも深いです。

首や背中の筋肉で内臓との関係はあまり無さそうにも見えますが、

実はそういった名残もあり、

体調不良の時に緊張して肩こり首こりとして現れる事も有ります。

 

猫背、ストレートネックとの関係

僧帽筋が弱いと姿勢が悪くなります。

 

頭の重さを支えきれず姿勢が悪くなると、

背中が丸くなる「猫背」や、

首の骨がまっすぐになる「ストレートネック」になり、

筋肉の緊張は強くなります。

 

ぎゅっと筋肉が収縮した状態では、筋肉が本来の力を発揮できず、

その結果、さらに頭を支える事が困難になります。

その為、頭は前方へと移動し、

猫背やストレートネックはますます悪化します。

そしてさらに首への負担が増して、筋肉は固くなります。

この悪循環です。

 

良い姿勢を保っていないと…

逆に言うと、悪い姿勢ではちゃんと僧帽筋が使われていません。

使われていなければ筋肉は弱くなります。

そして衰えた筋肉は固くなってしまい、ちゃんと働かなくなります。

きちんと支える事が出来ない筋肉には負担がかかり続け、

首を引っ張る事が出来ないのでタルミにもつながります。

 

そして、フェイスラインのたるみへ…

肩こりがひどい状態が続くと、

僧帽筋と胸鎖乳突筋とつながる「広頚筋」にも影響し、

首にタルミが出来ます。

猫背になるとアゴが前に出てさらに首もたるみやすくなります。

首がたるむ事で表情筋にも影響し、

首からつながるフェイスラインのタルミにも影響します。

 

肩こりは血液循環を悪くして、

顔が血色悪くなりくすんで見えるようになったり、

お肌に必要な物が行き渡らず、老廃物をうまく捨てられなくなることで

お肌のトラブルにもつながります。

それだけでなく、

筋肉同士につながりが有る事により、

引き下げてしまいタルミの原因にもなってしまうのです。

 

 

 

僧帽筋のストレッチ

硬くなってしまった筋肉はストレッチをして柔らかくしましょう。

まずは、僧帽筋の上部を狙ったストレッチです。

 

まず、右側の僧帽筋をストレッチする時の説明をします。

 

椅子に腰かけた状態で、

右手を腰に回して、左手を頭に添えます。

そこから、頭を左側へ傾けます。

グイッと引っ張るのではなく、じわーっと伸ばすように、

一回に30秒かけるのを目安に行いましょう。

 

さらに、顔を左側に向けて同じように行うと、

中心に近い僧帽筋をストレッチすることが出来ます。

左側をストレッチするときはそれぞれ反対に行います。

 

次に、僧帽筋の中部を狙ったストレッチです。

 

椅子に腰かけて、手のひらを合わせて前に突き出します。

そこから、腕全体を前に突き出す

=肩甲骨を外側に出すように

ストレッチします。

僧帽筋中部は肩甲骨を寄せる動きをしますので、

それと逆の動きでストレッチします。

 

この時、背中を丸めてしまうとあまり僧帽筋には効果が有りません。

肩甲骨を外へ、前へ出すように意識して行います。

こちらも30秒かけてじわーっと伸ばす事を意識しましょう。

 

これでしたら、お仕事の合間にでも簡単に行えるかと思います、

こちらの肩甲骨回しも効果的ですので是非お試しください。↓

「これが普通…」とあきらめていませんか?頑固な肩こりを解消して美しくなる秘訣

 

 

 

僧帽筋を鍛えるには?

肩が凝りやすいのは、支える筋肉が弱いからです。

僧帽筋を鍛えるのに良いトレーニングを一つご紹介します。

「シュラッグ」です。

 

ダンベルなどを持って行う事が多いですが、

ご家庭で行うのにダンベルが無ければペットボトルに水を入れて使用しましょう。

 

手を腰の位置にします。

下におろして、僧帽筋にストレッチがかかるような姿勢を取ります。

出来るだけ下から始めると可動域も広くなりトレーニング効果も上がります。

肘は少し曲げておきます。

腕を使ってではなく、肩をすくめるようにして持ち上げます。

 

下ろす時は、完全にしたまで下ろすと筋肉の緊張が抜けてしまいます。

緊張した状態を維持したいので、

下ろすのは出来れば力が抜けきらないところまでにしておきます。

 

10回を1セット、一日3セットから始めましょう。

 

ポイント

まずは軽い重量から始めましょう。

重すぎると無理に上げる事になり、僧帽筋以外の筋肉に意識が行ってしまいます。

特に、上げる時に体をそらして反動をつけてしまうと三角筋の後部線維に負担が逃げてしまいます。

 

悪い姿勢↓

肘を曲げすぎると腕に負担がかかりすぎるので気をつけましょう。

まずは軽い重量で、肩をすくめて肩甲骨が動く事を感じながら僧帽筋を意識して行いましょう。

 

僧帽筋を鍛える事により…

男性に比べて女性の方が肩こりに悩まされる事が多い理由の一つに、

筋力が弱い事が挙げられます。

頭の重さや、肩甲骨を通じて腕の重さをしっかりと支えられるようになれば、

姿勢も良くなり、肩こりも改善します。

そして、首からフェイスラインもスッキリ!

 

首のタルミは年齢が正直に出やすい所でもあります。

メイクやファッションを気遣っているようでも、

首にお年が見えていたら残念な事に…

美容鍼灸でも首のたるみのお悩みには対応可能ですが、

併せて筋トレもしていただけばさらに効果が上がりますよ!