「脂を摂ると太る」と考えている方はいらっしゃるでしょうか?

「高たんぱく低脂肪」という言葉をよく聞いたものです。

脂を摂りすぎては良くない、というところから極端な脂質カットするダイエットも流行りました。

昨今の炭水化物ダイエットの影に隠れてそれほど脂質のカットは言われなくなり、

むしろ良い脂質を摂ろう、という流れになってきています。

 

美容を気にする方にとってもとても重要な脂質についてお話します。

 

「脂肪=太る」?

カロリーを持つ栄養素である炭水化物、タンパク質、脂質の内、

炭水化物とタンパク質は1g当たり4㎉であるのに対し、脂質は1g当たり9㎉です。

 

そんな所から脂質=高カロリーで太る、というイメージがついてしまったと思われます。

もちろん、なんでも摂りすぎれば太る原因となりますが、

必ずしも高カロリーだから太る、という物でもありません。

脂質は実は腹持ちが良いものです。

 

消化が遅く、胃腸で滞留する時間も長くなります。そのため、満腹感も持続します。

それに対し炭水化物は消化が早く、脂質よりも腹持ちが悪いと言えます。

さらに、炭水化物は食後の血糖値が上昇しやすいです。

血糖値が上昇すると、血糖値を下げる働きのあるホルモンの「インスリン」の分泌が活発になります。

インスリンは血糖値を下げるだけでなく、脂肪の分解を抑制して、

脂肪細胞への体脂肪の蓄積を促進する働きもあるので、結果的に太りやすい体を作ります。

 

逆に言えば、すぐにエネルギーになりやすいのは炭水化物です。

何が良くて何が悪いと決めてしまうのではなく、状況に応じて摂取する事も大切です。

 

血糖値の上昇は美肌にも悪?

血糖値が高すぎるのは良くない事、というのはなんとなくはわかっていても

何が悪いのかは知らない方も多いのではないでしょうか?

 

何が悪いのか、を説明する一つの要因が「糖化生成物(AGEs)」です。

血中の余分な糖質は体内のタンパク質や脂質と結合し、糖化生成物を作ります。

この反応を「糖化」と呼びます。

 

この糖化生成物は体内の色々なところで蓄積し、問題を起こします。

 

例えば…

血管…血管の柔軟性を無くして血圧が上昇する。心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める。

水晶体…目のレンズの役割をする水晶体が濁り、白内障を引き起こす。

骨…骨粗しょう症を起こす

脳…認知症を進める

等です

 

まとめてみると「老化」を促進すると言えます。

 

そして、お肌にとっても糖化生成物が蓄積すると真皮層のコラーゲンが糖化する事により

ハリが無くなりたるみやシワの原因となり、さらに蓄積が進むと茶色がかったくすんだお肌になってしまいます

 

脂質の美容効果とは?

まず、脂質の身体での役割を考えてみるとエネルギー源となる以外にも、

 

皮脂として分泌される

細胞膜の材料となる

ホルモンの材料となる

脂溶性ビタミンの吸収を促進する

 

等が挙げられます。

 

皮脂膜を作る

お肌のバリア機能として働く皮脂膜は体から分泌された脂と汗が混ざって作られます。

脂肪の過剰な摂取は確かに良くありませんが、極端に摂取を制限してしまっても良くありません。

 

皮脂膜が不足するとバリア機能が低下し、乾燥しやすくなったりお肌がガサガサになったり、

といったトラブルにつながります。

 

女性は30代から急激に皮脂が減少します。

そうなると皮脂膜がお肌を守れず、肌トラブルが起こります。

 

皮脂の不足は、洗顔のし過ぎや誤った洗顔方法などでお肌から失われる事だけでなく、

食事による摂取不足も問題です。

 

細胞膜の材料となる

脂質を構成している物質を「脂肪酸」と言いますが、

脂肪酸には「飽和飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」の二種類があります。

不飽和脂肪酸は植物や青魚に多く含まれ、常温では液体で存在します。

一方、飽和脂肪酸は動物に多く含まれ、常温では固形であることが多いです。

 

この内、不飽和脂肪酸はオメガ3、オメガ6、オメガ9の三つに分類されます。

さらにこの中でオメガ3およびオメガ6は細胞膜の材料となります。

これらが不足すれば細胞の入れ替わりがうまく行われずターンオーバーが乱れます

このオメガ3とオメガ6は人間の体内で作り出すことが出来ず、

食事などで外から補う必要があります。

 

ホルモンの材料となる

ホルモンはいくつかに分類されますが、

その中で「ステロイドホルモン」はコレステロールから作られます。

女性ホルモン、男性ホルモンといった「性ホルモン」はステロイドホルモンです。

脂質であるコレステロールが極端に不足すると、ホルモンバランスの乱れにもつながります。

ホルモンバランスの乱れは肌荒れなどの肌トラブルを引き起こします。

 

脂溶性ビタミンの吸収を促進する

ビタミンには水溶性の物と脂溶性の物が有ります。

水溶性のビタミンは体に吸収されやすいですが、

脂溶性ビタミンは脂と一緒に摂取すると吸収が高まります。

 

抗酸化作用が強く、美肌作りに効果の高いリコピン、カロテン、ビタミンEなどは

脂質と一緒に取った方が効率的です。

 

 

では積極的に脂を摂れば良いの?

残念ながら食事において「絶対に良い」と言う物はなかなかない物。

最初に述べたように、脂質だって摂りすぎれば太るのはもちろん、

皮脂の分泌が過剰になれば「脂性肌」「ニキビ」といったお肌のお悩みにもつながります

 

そして不飽和脂肪酸の内、オメガ3とオメガ6は酸化しやすいという特徴があり、

特にオメガ6は酸化しやすいので摂りすぎればお肌が酸化して肌老化につながります。

一方、オメガ9は酸化しにくいという特徴を持つので、やはり摂取するバランスが大切になります。